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措置要求と苦情申立の活用


文責/本多伸行(当集会実行委員)


<はじめに>

 自治体で長く続いた特別職非常勤任用であれば、地方公務員法の適用が除外となるので労働基本権の全てがあった。だから、ユニオン加入や独立労働組合結成で、労働組合法上の団体交渉や労働協約締結や労働委員会申し立てができたし、ストライキさえ可能であった。

 しかし、地方公務員法改定による会計年度任用制度の非選択的導入(強制的任用替え)は、特別職非常勤職員を一般職に切り替えて労働基本権を奪った。そして、その代償とされるのが[措置要求]と[苦情処理]である。これは、非現業や非企業の無期常勤職員と同じ扱いである。

 そもそも労働基本権の剥奪が不当であるが(私達の仲間はILOに提訴)、代償としての措置要求と苦情処理は活用できるしすべきである。


1、措置要求制度と苦情処理の概要

※主に「逐条地方公務員法」2017年/第4次改訂版(学陽書房)から引用。

この本は全国の自治体の人事当局の“虎の巻”。

︎措置要求 地公法第46条

・勤労基本権制限の代償のうち、団体協約締結権が認められていないことへの代償。 

・共同で要求できる

・職員が他の職員から民法上の委任による代理権を授与されての要求ができる。ただし、全面的に委任し、本人参加なくの審理は不適切

・第三者の職員も“見るに見かねる”申立がでできる。

・職員以外が代理人参加できる(自治体の規則で確認)。現業職員も可能。

・広く勤務条件について要求できる。

・転勤など過去のものも要求できる。

・退職者は要求できず、退職手当も要求できない。

・要求できるのは、[給与、勤務時間、その他の勤務条件]で、職員団体の交渉の対象となる勤務条件と同じ。 

 勤務条件とは、職員が自治体に勤労を提供するについて存する諸条件で、職員が勤務を提供し、またはその提供を継続するかどうかの決心をするに当たり一般的に当然考慮の対象となるべき利害関係事項。

・勤務条件の範囲は広く、専従許可、職務専念義務免除、公務災害補償もできる。

・現在の勤務条件を変更しないよう要求もできる。

・過去における勤務条件も対象とされる(行政実例/地自公発第332号)。

 これは、会計年度任用への任用切り替えの際に、疑似パートに転換されたり、ボーナス支給と引き換えに月例賃金を下げられたり等、制度変更時の一方的不利益についても措置要求できると考えられる。

・「管理運営事項」(地公法第55条第3項がハードルになる場合があるが、管理運営事項の処理の結果影響を受ける勤務条件は措置要求の対象。拒まれるのは管理運営事項への介入。

︎苦情処理 地公法第8条第1項11号と第2項3号 

・人事委員会と公平委員会は仲介者で、苦情を解決する強制的な権限はないが、当事者の納得が得られるよう努めなければならない。 

・東京都と23区の人事委員会では、電話での匿名でも受理し、当該自治体に伝えるか否かの判断を求める。


2、措置要求も苦情申立も、現業や公営企業の職員(地公労法適用)には申立資格ない。

 これは労働(基本)2権(労働協約•労働委員会•共同調整会議の活用が可能)を有するからでむしろ有利。また、地方自治法が禁じる非常勤への手当支給の縛りもない。

 ただし、労働(基本)2権は個人ではなく労働組合としてしか行使できない。

それは、本来労働組合法や地公労法は集団的労使関係型であるからである。一方の労働基本権剥奪の代償制度が個人的労使関係型となっていることの方が団結権を侵害している。

 なお、現業系企業系職員の労働(基本)2権行使は非現業との混合組合でも可能。


3、具体的な仮定サンプルで検討

①A市は中規模の自治体で、公平委員会が設けられている。更に、この公平委員会は約30自治体の共同設置(「一部事務組合」方式)。

②A市では、会計年度任用制度導入時に多数がフルタイムから擬似パートに強制転換させられ、一部は回復されたものの残る擬似パートは不満を募らせている。③A市には、産別傘下の大きな市職労があるが擬似パートを承認するような組合。

 別に雇用形態にこだわらないユニオンがあり、ここが措置要求を準備している。

④ユニオンは、公平委員会への電話問い合わせで「会計年度任用職員は措置要求できない」と言われた。

➡︎ では、どうするか

❶なにも無理する必要はない。トレーニングのつもりで、制度確認から始める。

❷まず、以下の総務省通知※(要旨「人事委員会と公平委員会は、措置要求権などについて、会計年度任用職員に周知すること」)について、

①いつ受け取り

②どんな検討をして 

③何を行ってきたか

を確認する。 ※下記通知の中の 


総行公第19 令和4314

各都道府県総務部長

(市区町村担当課扱い)

各人事委員会事務局長 殿

全国人事委員会連合会長

全国公平委員会連合会長総務省自治行政局公務員部 公務員課長 (公印略)

会計年度任用職員は一般職の地方公務員であることから、措置要求及び審査請求 のほか、人事委員会又は公平委員会への苦情相談の対象となる。会計年度任用職員の 募集・任用に当たっては、人事委員会又は公平委員会への苦情相談等の対象となる旨を説明いただきたいこと。また、措置要求、審査請求及び苦情相談の制度の周知に当 たって、会計年度任用職員についても対象となることを明記することが、会計年度任 用職員が苦情相談を行いやすい環境を整備するために有益であると考えられること から、職員への周知に当たって留意いただきたいこと。

❸ユニオンへの「会計年度は措置要求できない」説明について、

︎誤っており、権利侵害の不利益を与えたことを認めさせて

︎何故こんなことが起きたのかの究明し、回復策(説明会や説明パンフなど)を求める

︎措置要求権がない職員/職種(上記のように有利な地公労法適用)の明確化を求める。 

→明確化されたら、自治体当局に「苦情処理共同調整会議」(地公労法13条)の開催を求めて、現業の労働2権確立と労働条件の改善をはかることに活用する。

公平委員会に対して、これまで市職員から出された措置要求と苦情申立の歴年総件数と、臨時職員や会計年度年度任用職員からの内訳件数を質す。

 抵抗して示さない場合は情報公開請求する。申立実績がほとんどない場合は、機能不全や責務不履行であり、追及を考えるべき


参考資料】

・東京都の制度説明




東京の特別区人事委員会に出された苦情相談は…

2020年度 57件(うち会計年度任用職員20件)

2021年度 49件(うち会計年度任用職員13件)

※2021.4.1現在の特別区の会計年度任用職員は、37,775人

※以上は、昨年10.2「なくそう!官製WP集会」配布資料からの抜粋

2023.7.8 勉強会で出された意見】

・人事委員会に提出資格を確認して、不当な自治体の「雇用ではなく有償ボランティア」説明を崩した。労基署はの労災保険法適用の確認も有効。

・措置要求に幻想を持たず、運動における第三者機関活用として限界やバランスを考えるべき。

 例えば、口頭審理を実現して当事者の職務専念義務免除や傍聴者の一斉年休取得で運動として進める。< 了 >

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